目次
インタビュー音源の特徴
文字起こしをする音源として多いのがインタビューです。
インタビューはWEBサイトや雑誌・新聞などの紙媒体の記事に載せることが多いため、音声をテキスト化する必要があります。
また、最近ではインタビュー動画にも字幕を付けて、より内容を分かりやすくすることも増えています。
こうしたインタビュー音源には、いくつかのタイプがあります。
話し手がとある内容について説明していくというタイプでは、話し手の感情や口調よりもその内容そのものが重要視されます。
一方で、インタビュイー(話し手)の経験や心情などを中心に聞き取りをする場合、内容もそうですが、同時に口調や感情がどのように表れているかという点にも注目することになります。
こうしたインタビュー目的の違いに応じて、文字起こしの手法を変えていく必要があります。
また、インタビューではあらかじめ原稿を作ってそれを読むという形を採ることはあまりありません。
予め質問項目はまとめてあるものの、普通に会話をしながら進めたりすることもあるため、インタビュイーの言い淀みや言い間違いが入ったり、その人の話し方の癖や緊張によって、言葉が明瞭に話されず聞き取りにくいという場面も出てきます。
さらに、どの媒体にインタビューを掲載するかということにも違いが出てくるという特徴もあります。
動画にアップするためのものであれば、インタビュイーは身振りや表情で表現することができますので、言葉以外の表現方法を使うことができます。
一方で、雑誌などの紙媒体への掲載ということだと、完全に言葉だけとなりますので、より正確に話のみで意図を伝える必要が出てきます。
このように、インタビュー音源は、話の内容や目的、どのメディアに掲載するかといった要素で異なる特徴が出てくるものなのです。
この違いを見分け、それに応じた適切な文字起こしをする必要があります。
どんな書き起こしのスタイルがあるのか、そしてインタビューの種類に応じた適切な書き起こしスタイルの選び方をチェックしてみましょう。
「素起こし」の特徴と向いているインタビュー音源の種類
書き起こしの一つのスタイルとして、「素起こし」というものがあります。
これは、基本的に音源にあるすべての音声を文字に起こすというものです。
インタビューの中では、「えっと」や「うーん」といった言い淀みの言葉や、「うん」「いや」といった相槌が度々含まれます。
こうした、話の内容そのものには影響のない、いわば意味を持たない言葉のことを「ケバ」と呼びます。このケバも含めてすべての音声を文字に起こすのが「素起こし」です。
素起こしは、話の内容の細かな点まで記載する必要がある時によく使用されます。
音源の種類によっては、ちょっとした言葉の端々や言い淀みのような言葉にも意味があるケースも存在するからです。
たとえば、事件や事故の被害者、加害者にインタビューをするような時は、一言一句聞き逃がせませんよね。
言い淀んでいるということ自体が、なんらかの答えを出していると推測されてることもありますので、できるだけ正確に話の流れを残すことが重要となります。
さらに、相槌を打っているかどうかでも本人が肯定の向きでいるのか、無視しているのかということも分かります。
小さくてあまり意味を持たないように思える相槌でも、話全体の流れや雰囲気を考えるとインタビュイーの意図が見えることもありますので、細かな点にこだわりたい場合は、こうした「ケバ」も入れた方がわかりやすい場合があるのです。
素起こしをするもう一つの大きなメリットは、インタビュイーの感情や思考、性格などがそこから見えてくることがあるという点です。
たとえば、ほとんどケバがなく言い淀みをしない人であれば、話が上手で頭の回転が速い人であるというイメージができます。
逆に、「うんとねー」のような若干砕けた仕方で言い淀みをしているケバが入っていると、そのインタビューの雰囲気がフランクであることをなんとなく思い浮かべることができるでしょう。
さらに、経験談を話していたり何らかの出来事を回想している場面では、こうしたケバが入ることで、『話し手が悲しい思いをしている』とか、『話しづらい雰囲気になっている』ということも理解できます。
その時の感情もケバによって表現できるというわけです。
このように、「素起こし」はインタビュイーの感情や出来事の情景を表現するのに適したものであることが分かります。
そのため、インタビューの中でも、当時の出来事を振り返っての話、本人の人物像を知るための対談、独白話などの内容を文字起こしする時には向いている手法と言えるでしょう。
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「けばとり」 の特徴と向いているインタビュー音源の種類
「素起こし」に対して「けばとり」とは、意味のない「ケバ」を取り除いた文字起こしのスタイルです。
また、言い間違いの言い直しや、特にはっきりしていない相槌、口癖などを除いていきます。
ただ、無意味な音声の削除は行いますが、特に修正や加筆をすることはありません。
そのため、何らかの文法上の間違いや用語の使い間違い、文末のですます調の統一などは行わずに書き起こします。
これによって、まず文章が見やすくなるというメリットが生まれます。
余計な言葉がなくなり、話の内容だけになりますので、さっと読んでインタビューの趣旨を理解しやすくなるのです。
特に、インタビュイー自身に注目するのではなく、その説明の内容に注目したいインタビューではこのスタイルの方がずっと効果的です。
また、文章量が減るというのも利点と言えます。
Web記事にするなどの用途で文字起こしをするのであれば、ダラダラと長い文章にするのは避けたいところです。
その場合、無駄な言い淀みや相槌があると、余計な文字数を使ってしまうことになりますので、できるだけ短くできる「けばとり」の方が適していると言えます。
これはYouTubeなどの動画に字幕を貼る場合にも同じことが言えます。
どうしても画面の大きさの都合で、字幕はできるだけコンパクトにまとめるのが望ましいものです。
あまりに文字を詰め込み過ぎると、非常に見づらい動画となってしまいます。
そのため、できるだけ不要なワードは取り除いて文字数を少なくするけばとりが適しているでしょう。
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インタビューの文字起こしをする際の注意点
どのスタイルの文字起こしを選択するかということに加えて、インタビュー音源ではいくつかの注意点があります。
それは、インタビューを行う環境と使用する機器です。
文字起こしをする際に作業を非常に面倒にさせるのが、外部の雑音です。
風切り音や周りの人のしゃべり声などが入っていると、肝心のインタビュイーの声が聞き取れなくなってしまいます。
雑音が多いと、正確な書き起こしができなくなる原因にもなりますので、注意が必要です。
インタビューをする場所として選ばれることが多いのが喫茶店ですが、できるだけ入り口から離れていて人が通らないところ、キッチンや道路などからの雑音が聞こえないところを選ぶようにしましょう。
音源を聞き返してみるとわかりやすいですが、普通に話していては気にならない程度の雑踏も、音声になると影響が大きいことがわかります。
また、用いるICレコーダーにも気を配りましょう。
人の声を上手に拾ってクリアに録音してくれるものもありますが、中には全体の音をまんべんなく拾ってしまって、声がぼやけてしまう特性のレコーダーもあります。
使うレコーダーによって、かなりの程度聞き取りやすさが変わってくるのです。
そのため、インタビューをする際には、一度手持ちのレコーダーを使って試し録音をしてから、自分で聞いてみると良いでしょう。
はっきりと、言葉の端々まで聞き取れるようなクリアさがあるのかを確かめてください。
環境や機械以外での注意点は、できるだけ話し手にレコーダーに向かって話してもらうこと・ゆっくりはっきりと話してもらうことも大事です。
もちろん、それぞれの人の話し方の特徴というものもありますが、インタビュアーが注意を促したり、ゆっくりとした口調で質問をすることで、相手も分かりやすい話し方をしてくれるようになるものです。
さらに、インタビューをしている段階で、ちょっと不明瞭で聞き取りづらいなと思える回答があったら、もう一度聞き直してみるという配慮もあると万全です。
実際に生の声を聞いているよりも、録音されているものの方が聞き取りとりにくくなります。
インタビュアーが聞き取りづらいと思うのであれば、文字起こしをする人はさらに聞き取りづらくなってしまいます。
録音音源から文字起こしをするということを念頭に置きながらインタビューをするのは、その後の作業をスムーズにするためにとても大切なことなのです。
このように、インタビュー音源の書き起こしをするために当たって、いくつかのポイントを押さえておくとうまく行きます。
まず、インタビューの内容と目的、掲載するメディアを念頭に置いてどのスタイルの文字起こしをするかです。
「けばとり」と「素起こし」という方法を選ぶことができますが、細部までこだわり話の雰囲気を再現しなければいけないということでない限り、「けばとり」で良いでしょう。
その上で、実際にインタビューをする際には、録音した内容から書き起こすという作業を意識して、できるだけクリアで分かりやすい録音ができるようにすることが重要です。
インタビュアーの配慮と会話の技術によって、作業がしやすい音源を作ることができるのです。
★文字起こし会社が選ぶ、インタビュー録音におすすめなICレコーダー
インタビューの中身と目的に合わせた文字起こしの必要性
このように、書き起こしをする場合に使われることが多い「素起こし」と「けばとり」の間には、明確な目的の違いがあります。
インタビュー音源の書き起こしの依頼をする時には、インタビューの中身とどんな媒体に掲載するのかということを念頭に置いて、どのスタイルにするかを決めるようにしましょう。
全体としては、会話の雰囲気やインタビュイーの心情の分析が必要となる場合、どんな細かな点についても残しておかないといけないという場合には「素起こし」が必要となります。
しかし、話の内容が分かれば十分、コンパクトに掲載したいということであれば「けばとり」を選びましょう。
インタビュー音源ということに限れば、多くのケースでこうした要素を考えて「けばとり」が選ばれます。
料金も安くなる傾向にありますし、後の加工もしやすいため、特に必要がないのであれば「けばとり」を選んで問題ありません。